3 〜告白〜


 圭一と魅音の二人は、突き飛ばされた後、一瞬の間を空けて、二人ともが抱き合った形から逃げるように離れる。
「け、圭ちゃん。あ、あー、…ゴメンね?」
 けっして魅音が悪いわけではないんだが謝罪。
「え、な、ああ、気にすんな」
 二人ともが困惑しているという状況。
 いかにもラブコメっぽさ全開だ。

◆   ◆   ◆

 モニタールームには先ほど詩音が合流して、四人のギャラリーがいる。
 仕掛け人…というか大黒幕の詩音は、ソレまでの行動をビデオで早回しで見てこれまでの経緯は把握済み。
「ねぇ皆さん。お姉と圭ちゃんのどっちが告白するか賭けません?」
 詩音が、いやらしい笑みを浮かべながら問う。
「あーら。いいですわね。私は魅音さんに賭けますわよ。圭一さんにそんなことを言えるような度胸があるわけありませんもの。ヲーッホッホッホー」
 初めに食いついたのは沙都子。
「みー。ボクも沙都子に同感なのです。にぱー☆」
「レナも魅ーちゃんかな?…かな?」
 梨花、レナの二名も参加。
 詩音の賭けたのは、両方告白しないという選択肢。
 
 さてこの勝負。勝つのは誰か?

 ◆   ◆   ◆

 隣の部屋で博打が打たれてるとは知らずに、当事者たち。

「レナ達帰っちゃったみたいだね」
 先ほどの余韻でまだ顔が赤い魅音。
「そうみたいだな」
 圭一の声も軽く上ずっている。
「……じゃあ圭ちゃん。私たちも帰ろうか?」
「ああ。ちょっと待ってくれ………な、なあ魅音。この際だから言うけどな…。」
 魅音は少し俯き気味で振り返って圭一のほうを向く。
「うん?何?」
「えっと……」
 圭一は台詞の途中で魅音に近づき抱きしめる。
「付き合ってくれ!」
「け、け、圭ちゃん!?えっ!?」
 魅音は、顔を真っ赤に、余すとこなく紅潮して圭一に疑問をぶつける。
 否、ぶつけるというより、呟くぐらいか?

 魅音は、真っ赤になりつつ、ぎこちない動作でだが、圭一の背に手を回して抱きしめ返す。
「わ、わ、私も、圭ちゃんのこと、好、好き、だよ……」
 魅音の台詞は、最後の方は、消え入るような声だったが、二人は零距離で会話しているので、圭一の耳にも届いている。
 ちなみに、沙都子の盗聴器もかろうじてその音を拾った。
 そして訪れる沈黙。
「………なあ、魅音。もう少し…抱きしめて(こうして)てもいいか?」
「…う、うん……」
 魅音の声は、沙都子の盗聴器でも聞き取れなかった。

 ◆   ◆   ◆

 その時モニタールーム。

 全員に動揺が見て取れた。
「まさか、圭一さんから切り出すなんて思いませんでしたわ…」
「みー。僕も吃驚なのですよ」
「はぅ。魅ーちゃん羨ましいよ……じゃなくて!ええと、なんていうのかな?かな?」
「……さてと、帰ってからお姉でもからかうとしましょうか」

 ドレが誰の台詞かは、ご想像にお任せする。
 
 ◆   ◆   ◆

 圭一と魅音の抱擁は、どちらから先に離したのかは二人の秘密にしておいてやろう。

教室を出て、下駄箱に。
靴を出すために下駄箱の扉を開ける。
二人ともの靴の上に封筒が一つずつ。
中に入っていたファンシーな便箋には、両方とも同じメッセージが書かれていた。

『カップル成立オメデトウ!  byレナ、沙都子、梨花、詩音』

二人は、同様の驚いた顔をみせたが、諦めたような表情で笑いあった。

二人はその後、赤い顔で並んで帰っていった。
ちなみに圭一の鞄を魅音(メイド服着用)が持っていたので、主人とメイドの関係に見えないことはないような状態で。

恋人と見るのはちょっと無理があるようで、
はたまたソレにしか見えないことも無いような。

 ◆   ◆   ◆


後日談

その日から、生徒たちの間では、沙都子が作成した一枚のDVDディスクが、回されていたらしい。
内容はご想像にお任せします(製作者が沙都子、及び詩音という事をお忘れなく)。

END






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