「link」から、早福響様の2/2さまへ行って、
「メイド様がみてる」を読んでから読んでいただけると話がわかるかと。








「ねぇ蓉子」
「なに?」
 聖が起こした騒動により、本日予定していた会議はまた後日となり、妹たちは帰らせたから、今薔薇の館に残ってるのは紅薔薇さまである私、水野蓉子と、黄薔薇さまの江利子の二人だけ。
「あれじゃ、志摩子ちゃんが可哀想だよね…」
「そうねぇ……。本当に恒例行事にしちゃおうか」
「……面白そうじゃん」
 私が軽く出した提案に江利子が食いつく。
 今の沈黙は、祥子と令のメイド衣装でも想像したんだろうか?
「けど……」
「志摩子ちゃんはパスして、聖に着させないとね」
「じゃ、決まりね。祐巳ちゃん達には私からちょっと遅れてくるように伝えとくわ。令と祥子には江利子から電話しといて」
「了解」
 明日、聖がどんな顔するか……。
 面白そう。


   ◆   ◆   ◆


「もしもし、福沢ですけど」
「あ、祐巳ちゃん?」
「ロ、紅薔薇さま!?」
「そうよ。そんなにビックリしなくたっていいじゃないの」
「は、はい。すいません。でも、どうなさったんですか?」
「ちょっと、祐巳ちゃんの声が聞きたくて……」
「はい!?」
「ふふ。冗談よ、冗談。それより明日なんだけど……」
「は、はい」
「由乃ちゃんと志摩子ちゃんと一緒にちょっと遅めに来てくれる?」
「……わかりましたけど、どうして急にこんなことを?」
「それは明日になってからのお楽しみということで。ね?」
「わ、わかりました」
「それじゃ、ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう」


   ◆   ◆   ◆


「もしもし、支倉です」
「令? 私。江利子だけど」
「お、お姉さま!? そうされたんですか」
「明日なんだけど、祥子と一緒に、少し早く来てくれる?」
「はぁ。わかりました。ですけど、何のために?」
「それは、来たらわかるお楽しみってことで。じゃあね」
「あ、はい。それでは失礼します」


   ◆   ◆   ◆


 ということがあったりで翌日。
 私は紅薔薇さまに言われたとおり、由乃さんと志摩子さんを連れて、図書館で時間を潰していた。
「志摩子さん……そ、そんな落ち込むことないって。可愛かったし」
「ありがとう。……でも言わないで」
 志摩子さんは今朝からずっとこの調子で授業中もずっと意気消沈していた。
「そ、そろそろ行こっか。割と時間はたってるし」
「そ、そうだよ。行こ。志摩子さん」
 私たちは、私と由乃さんで志摩子さんを支えるようにして薔薇の館に向かった。


   ◆   ◆   ◆


「お、お姉さま!?」
「ちょ、れ、令ちゃん!?」
「…………」
 薔薇の館に着くなり、私たち三人は驚愕した。
 志摩子さんはどちらかというと絶句というかんじだけど。
 その理由は……。
「祐巳。できればこれは今日中に忘れなさい」
「いや、だって、お姉さまが……由乃ぉ〜」
 お姉さまと令さま。それに聖様が……メイド服を着ていたからだった。
「どう? びっくりした?」
「二人とも可愛くなったでしょ?」
 紅薔薇さまも黄薔薇さまも、とてもいい笑顔をしていた。
「ちょっとー。私はー?」
 白薔薇さまもおちゃらけた感じでいうが、少しほほに朱がさしているように見える。
 ちなみに、お姉さま……祥子さまのメイド服はドレスの部分が薄紅色。令さまのメイド服のドレス部分は山吹色。聖さまのは、昨日志摩子さんに着せてたのとおなじオーソドックスな紺色。
 空気が固まりかけたところで、紅薔薇さまが言った。
「あのままじゃ、志摩子ちゃんがかわいそうだからね。本当につぼみ三人をメイドにしてみたわけ。聖はおしおき」
「志摩子ちゃん。聖は変態だけどちゃんとお仕置きしておいたから」
「ま、お座りなさいな」
 紅薔薇さまに促されて、私たちは席に着いた。
 その時、志摩子さんに聖さまがいった。
「その……ごめんね志摩子」
「…………」
 志摩子さんは返事しなかったけど、表情が少し和らいだように見えた。
「志摩子〜」
 聖さまが志摩子さんの顔を覗き込む。
「お茶を淹れてくださいますか?『聖さま』」

 ……………………。
 志摩子さんは結構根に持っているようだった。








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