「最近雨ばっかでヤになっちゃうよね」
「そうですか? それほどでもありませんけどどうしてお姉さまはそんなに雨が嫌いなんですか?」
「嫌いっていうか…うーん。でも私癖っ毛だから湿気が多いと纏めるのが大変でさ。瞳子は平気なの?」
「少しは気になりますけど、いつもと大差ないですわ」
 私は今山百合会の仕事を終えて、瞳子と一緒に帰る途中。
 M駅で別れちゃうからそれまでは下らないことでもいいから話をしておきたかった。
「羨ましいなあ〜。それに六月って祝日もないし、なんかあんまりいい印象ないな」
「そうでもありませんわよ。例えば…紫陽花とかは梅雨の時期でも美しく咲く花もありますし、あとは…そうですね…ジューンブライドとかですかね?」
「ジューンブライドかぁ〜」
 瞳子ちゃんがウェディングドレス着たらきっとすっごく似合うんだろうな。
 ウェディングドレス。
 結婚式で花嫁を飾るもの。
 そっか…。
 私が瞳子ちゃんのお姉さまでいられるのはあと1年とない。
 卒業でぷっつりと絆が途切れてしまうということはないけど…。
「瞳子…おいで」
「何ですの?祐巳さま?」
「えい!」
 わたしはちょっと強引に瞳子を私の傘に引き込んだ。
「…どうしたんですの?祐巳さま?」
 私のいきなりの行動に瞳子ちゃんは困惑している。
 そりゃそうか。
「瞳子は…ずっと私の妹だよね」
「当たり前ですわ」
(それ以上になることは保証できませんけど、それ以下なんてありえませんわ)
 なんでかな?
 ジューンブライドぐらいでこんなに動揺しちゃうなんて。
 もっとどうどうとしていなくちゃ。
(私の隣を歩いてくださるのは…。祐巳さまですよね?)









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