「瞳子ちゃん! これとかも似合うんじゃない?」
「祐……お姉さま……。はしゃぎすぎですわよ」
「そうかな? あと学校じゃないから別に祐巳でもいいよ」
私は今祐巳さまと二人でショッピング(デート)に来ていた。
私と祐巳さまが姉妹(スール)になって、すでに何回か来ているけれど、そのたびに私は苦笑している気がする。
祐巳さまから誘っていただけて、一緒にいるとすごく嬉しい。
けど、祐巳さまのはしゃぎようったら……。
いちいちリアクションが大きいから、時々周りからの視線が恥ずかしい。
けど、祐巳さまが楽しそうならそれでいいかな。
とか思ってしまうのは私の甘さなのでしょうか?
ちなみに、祐巳さまがいちばんはしゃぐのが洋服店。
で、今がその洋服店。
私は色々な服を試着させられる羽目になるのですが……
「瞳子ちゃん。こんどはコレ着てみてよ」
祐巳さまにこんな無邪気なキラキラした目で頼まれたら……
「ねっ?」
断れる筈がありませんわ……。
祐巳さまは、私を着せ替えてまた次の服を探し始めた。
「っ!!」
そのとき、私は見つけてしまった。
私の天敵である細川可南子がこの店に入ってきたところを!!
幸い向こうはまだ気付いていないようですわね……
「祐巳さま。そろそろ他のお店に行きませんか」
「え? 瞳子ちゃん飽きちゃった?」
「そ、そうじゃありませんけど……。と、とにかく! 早くここを出ましょう」
「どうしたの?……あ、可南子ちゃんだ」
見つかった……。
「おーい、可……むぐ」
「祐巳さま! 気付かれてしまいますわ!!」
「え〜。でも、みんなでいた方が楽しいよ」
「祐巳さまが楽しくても、私が楽しくありませんわ!!」
「ん〜……。あっ!」
祐巳さまが何かを思いついたような顔をした。
なんだかとても悪い予感がしますわ……。
「瞳子ちゃん。十秒あげるから考えてね。昔から、好きな人の口をふさぐことができる魔法ってな〜んだ? 瞳子ちゃんがそれをしてくれたら、このままお店をでてもいいよ」
「……。ヒントはいただけませんの」
答えは一つしかなかったけど、もし違ったら恥ずかしいどころじゃすまないので一応確認のためにヒントをきいてみた。
「ん〜。ぱっとは……でてこないけど、行為だけに関するなら『白雪姫』とかかな? じゃ、よーい、すたーと。 じゅー。きゅー…」
祐巳さまは起きてるではありませんか! とかいう暇のなく祐巳さまはカウントダウンを開始した。
細川可南子と一緒にこの後を過ごすなんて考えられませんわ。だってまだお昼前ですのよ? あと半日以上を細川可南子なんかの所為で台無しにされてはかないませんわ!!
「……さーん。にー……」
あぁ、もう!!
迷ってる時間もありわせんわ!!
「いー……!」
「…………。は、早く、いい、行きましょう、ですわ!!」
こうして、私の唇は祐巳さまに奪われたのですわ……。
おまけ
「ねぇ、志摩子……」
「何でしょうお姉さま」
たまたま同じ店に居合わせた元・白薔薇さまの聖と、志摩子。
「なんか、祐巳ちゃんさぁ……」
「はい」
「何か、私のせいかな?」
「……たぶん、そうだと思います。」
「今は祥子がいるけど……」
「卒業された後が大変そうな気がしますわ……」
「大変だね……」
そんな志摩子が、急にかわいそうに思えて、聖は志摩子を抱きしめた。
あとがき
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