「令ちゃん…」
「なぁに?由乃」
 私の部屋の窓際。
 クーラーを効かせた部屋で、二人寄り添って窓の空を見上げている。
 今日は七月七日。
 七夕。
 日本人ならたいていの人は知っている。
 その昔、織姫と彦星が愛に溺れて仕事を怠けていたために、神に咎められた。そして、二人は天の川を挟み離れて住まわされた。会うことを許されたのは、一年に一度。7月7日のみ。二人はその日のためにと熱心に仕事に励んだという。
「七夕の話だけどさ…」
「うん」
 令ちゃんは空をみたまま答えた。
「あ、昔話の方ね。あれってさ、いくら怠けてたからといっても一年に一日だけって酷い話だと思わない? せめて月に一度とかにしてあげればいいのに」
「そういわれれば…。そうだね一年は確かに長いかな。でも、その方がロマンチックだと思うけど?」
 令ちゃんからはやはりというかなんというか、乙女チックな答えが返ってきた。
「じゃあ令ちゃんは私と一年間に一日しか会えないってことになっても平気なの?」
「え、それは……平気なわけないじゃない」
 うぅん。
 予想通りすぎて嬉しくもあり、つまらなさもあり…。
「ま、多分令ちゃんだったら一ヶ月でも耐えられないだろうけどね」
「あはは。…うん、多分…というか、絶対無理かな」
 令ちゃんは私の身体を軽く持ち上げて自分の前に持ってくる。
「そんなこと状況になっちゃったら…。絶対に、由乃を離さないから」
 令ちゃんはギュっと私を抱きしめる腕に力を込める。
「さぁてと。じゃあ神様に引き裂かれない為にも、由乃はちゃんと試験勉強をしなきゃね?」
「もう!! 七夕なんだから少しぐらい空気読んでよ!!」
 乙女なくせに、ヘンなところで空気が読めないんだから…。
 だから…。
 私がいてあげる。

 令ちゃん。
 絶対に、離さないでね。






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